補助金の返還・取消し・不正受給と、支援者の責任

交付の決定を受けても、補助金の手続は終わりません。取消しや返還が起きたとき、誰が返し、誰がどこまで負担するのかを、契約書にどう書くかを整理します。

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「返還は一方がすべて負担する」とだけ書いた契約は、原因が何であっても同じ結論になり、争いになったときに範囲を限って読まれる余地を相手に与えます。

このページの要点

  • 国の補助金で返還を命じられるのは補助事業者本人。交付の取消しと額の確定の二か所で返還が生じ、加算金・延滞金がかかる(補助金適正化法17条・18条・19条)。
  • 支援者に負担させる条項は、原因(資料の誤り、条件違反、支援者の誤り)ごとに分け、範囲と上限を置く(民法415条・420条・90条)。
  • 実績報告・状況報告・額の確定などの交付後の手続を支援に含めるか、報酬の算定基礎を交付決定額と確定額のどちらに置くかを、先に決める。
  • 不正な記載を求められたら断れること、解除できること、報酬の戻しの有無と範囲を条文にする。契約で責任を分けても、刑事責任は移らない。

結論:返還を命じられるのは補助事業者本人。支援者に負わせるなら、原因と範囲と上限を契約で組み立てる

補助金の申請支援の契約で、いちばん後回しにされやすいのが「交付のあとに、お金を返せと言われたとき」の定めです。申請が通り、入金があり、支援の報酬も支払われた時点で、関係者の関心は次の事業に移ります。ところが補助金は、交付の決定を受けただけで終わりではありません。事業を決定の内容と条件どおりに行い、実績を報告し、国の補助金であれば補助金等の額の確定を受けて、はじめて受け取った額が確定します。その途中や後で決定が取り消され、あるいは確定額を超えて交付していたことが分かれば、返還が命じられます。

契約書の観点から結論を先に並べます。第一に、国の補助金について返還の義務を負うのは、補助事業を行う補助事業者等(申請者)本人です(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律。以下「補助金適正化法」)。支援者は、法律上は返還の名宛人ではありません。第二に、だからこそ、支援者が申請者の返還の負担を肩代わりする約束は、契約で明示しない限り生じません。逆に、支援者の側から見れば、返還の負担を一切引き受けない旨を書いておかなければ、「責任を取れ」という主張の足場が残ります。第三に、返還の原因は、申請者の資料の誤りや条件違反、支援者の説明や作成の誤り、制度側の判断や事情の変更など、一つではありません。原因ごとに負担を分ける書き方が、双方にとって予測可能です。

このページは、返還・取消し・不正受給に関する契約の書き方を扱います。支援の全体像は補助金申請支援の契約書の全体像で、採択を保証しない条項と賠償額の上限の条文例は非保証と責任の上限のページで扱っています。ここでは、返還の仕組みを時系列で押さえたうえで、「誰が返し、誰がどこまで負担するか」と「返還が起きたときの報酬の戻し」に絞ります。なお、国の補助金以外の補助金・助成金(自治体や団体が交付するもの)は、各団体の規則・要綱・交付決定の条件で定められており、本ページの条文の説明がそのまま当てはまるとは限りません。

返還はどの時点で、なぜ起きるのか:交付決定から額の確定、そして取消しまで

返還が起きる場面を、国の補助金の仕組みで順にたどります。補助金適正化法では、補助金等の交付の決定がされると(6条)、決定の内容と条件が申請者に通知されます(8条)。条件には、経費の配分や事業内容の変更をするときは承認を受けること、事業を中止または廃止するときは承認を受けること、期間内に完了しないときは速やかに報告して指示を受けることなどが含まれます(7条)。申請者は決定の内容と条件に従って善良な管理者の注意をもって事業を行い、補助金を他の用途に使ってはなりません(11条)。事業の遂行の状況は、定めに従って報告します(12条)。事業が完了したとき(廃止の承認を受けたときを含みます)は、成果を記載した実績報告書を提出します(14条)。これを受けて審査があり、決定の内容と条件に適合すると認められたときに、交付すべき額が確定し通知されます(15条)。

返還はこの流れの二か所で起きます。一つは、取消しに伴う返還です。補助金の他の用途への使用その他、決定の内容や条件、法令などに違反したときは、交付の決定の全部または一部が取り消されることがあり(17条1項)、この取消しは額の確定のあとでも行われることがあります(同条3項)。取り消した部分についてすでに交付されている補助金があれば、期限を定めて返還が命じられます(18条1項)。もう一つは、額の確定に伴う返還です。確定した額を超えて交付されていた場合は、その超過分の返還が命じられます(同条2項)。なお、決定の取消しには、事情の変更によるもの(10条)もあり、こちらは返還の原因が申請者の違反とは限りません。契約書で「返還」と一括りに書くと、これらの違いが消えてしまいます。

返還を命じられた補助事業者等は、取消しの処分(17条1項)に関して返還を命じられた場合に、補助金の受領の日から納付の日までの日数に応じて、年10.95パーセントの割合で計算した加算金を国に納付しなければなりません(19条1項。政令で定めるところによる)。納期日までに納付しないときは、同じ割合の延滞金もかかります(同条2項)。また、返還を命じられ納付しない場合には、同種の事務または事業について交付すべき補助金の交付が一時停止され、または未納付額と相殺されることがあります(20条)。返還のお金は、報酬の何倍にもなりうる金額です。だからこそ、誰が何を負担するかを契約書に書いていなかったことが、揉めごとの中心になります。

返還と加算金が生じる位置(国の補助金の一般的な流れ)

  1. 交付の決定・通知申請内容に基づき交付が決定され、内容と条件が通知される(6条・8条)契約で決める決定の通知書の写しを申請者が支援者へ渡す旨、条件の確認を誰がするか
  2. 事業の遂行・状況報告決定の内容と条件に従って事業を行い、状況を報告する(11条・12条)。変更・中止は承認が必要(7条)契約で決める変更や中止の相談を、実行の前に支援者へ知らせる旨
  3. 実績報告事業が完了したら成果を記載した報告書を提出する(14条)契約で決める実績報告の作成を支援の範囲に含めるか。含めない場合は明記する
  4. 額の確定審査のうえ、交付すべき額が確定し通知される(15条)。確定額を超えて交付済みなら返還(18条2項)契約で決める報酬の算定基礎を確定額とするか、交付決定額とするか
  5. 取消し・返還命令違反があれば決定が取り消され(17条)、期限を定めて返還が命じられる(18条1項)。加算金・延滞金(19条)契約で決める返還の原因の分類、負担者、報酬の戻し

自治体や団体の補助金は、名称や段階が異なることがあります。実際の制度の流れは、公募要領・交付要綱・交付規則で確認が必要です。

返還の義務を負うのは本人:支援者に負わせる条項の限度

返還の名宛人が申請者本人であることは、契約書の組み立ての出発点です。そのうえで実務では、二つの方向の条項が現れます。一つは、委託者(申請者)側が起案する契約書で見られる、「補助金の返還や不正受給の責任はすべて受託者が負う」という趣旨の条項です。もう一つは、受託者(支援者)側が起案する契約書で見られる、「返還その他の不利益について、受託者は一切責任を負わない」という趣旨の条項です。どちらも極端で、争いになったときに裁判所や相手方から見て無理のある書き方になりやすい点が共通しています。

全額を支援者に負わせる条項には、いくつかの弱点があります。まず、返還の原因が申請者自身の事業の進め方(決定の条件に反する使い方、承認を得ない変更、財産の目的外使用など)にある場合まで支援者が負担するのは、支援の対価と釣り合いません。損害賠償の額を予定する条項は有効とされるのが原則ですが(民法420条)、著しく不均衡な定めは公序良俗に反して無効とされるおそれがあります(同法90条)。また、事業者どうしの契約では消費者契約法の規律は通常及ばないため、公序良俗や信義則(民法1条2項)の観点から、負担の範囲に合理的な限定があるかが問われることになります。

反対に、「一切責任を負わない」とだけ書く条項も万能ではありません。支援者自身の説明の誤りや、依頼された範囲の作成の誤りによって申請者が返還を命じられた場合に、債務不履行による損害賠償の責任(民法415条)まで消えるのかは、条項の文言と、故意・重大な過失の有無、取引上の社会通念に照らして判断されます。「一切」と書いたからといって、必ず有効とは限りません。

書き方の例(一般的な例) 返還が起きたときの責任の書き方

返還の負担者

よくある書き方補助金の返還が生じた場合は、すべて乙が負担する。
整えた書き方補助金の返還は、法令に基づき、補助事業者である甲が国に対して負う。乙は、乙の責めに帰すべき事由により甲に返還が生じたことを理由とする損害についてのみ、第○条の定めにより責任を負う。

理由返還の名宛人は申請者本人であることを前提に、支援者が負う範囲を「自らの責めに帰すべき事由による損害」に絞って書く。

原因の分類

よくある書き方返還その他の不利益について、乙は一切責任を負わない。
整えた書き方次の各号に該当するときは、甲の責任とする。(1) 甲が提供した資料の内容に誤りまたは虚偽があったとき (2) 甲が交付決定の内容または条件に反して事業を行ったとき (3) 甲が乙の助言に反する行為をしたとき。ただし、乙の故意または重大な過失による場合を除く。

理由申請者の側に原因がある場面を列挙し、支援者の故意・重過失は例外にしておくと、条項全体が無効とされるリスクが下がる。

不正受給の扱い

よくある書き方不正受給があれば損害をすべて賠償する。
整えた書き方甲または乙が、虚偽の記載その他不正の手段による申請を相手方から求められたときは、これを拒むことができ、これを理由とする契約の解除は債務不履行にあたらない。

理由不正受給は、事後の賠償ではなく、不正な依頼を断る権利と解除権で先に封じる。

不正な手段による受給と罰則:契約で責任を分けても、刑事責任は動かない

国の補助金で、偽りその他不正の手段により補助金等の交付を受けた者は、5年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金に処せられ、または併科されます(補助金適正化法29条1項)。補助金を他の用途に使った者には、3年以下の拘禁刑もしくは50万円以下の罰金、またはその併科があります(11条、30条)。立入検査や報告に応じない場合などにも罰則があります(23条、31条)。これらは法律が直接定める責任であり、契約で「支援者が引き受ける」「申請者が引き受ける」と書いても、その本人の刑事責任が契約によって移動するわけではありません。

また、刑法には、共同して犯罪を実行した者を正犯とし(刑法60条)、人を教唆して実行させた者に正犯の刑を科し(61条)、正犯を幇助した者を従犯とする(62条)定めがあります。支援者が申請者から不正な記載を求められ、これに応じて書類を作ったとなれば、本人だけでなく支援者も責任を問われる可能性が生じます。具体的な当てはまりは事案ごとですが、契約書の側でできることは明確です。虚偽や裏付けのない記載を求められたときは断れる、そのために解除できる、そして解除しても報酬の扱いが決まっている、という三点を条文に落としておくことです。申請者の責任と資料の確認については、申請者本人の責任と預かり物のページで詳しく扱います。

交付後の手続(実績報告・額の確定・状況報告)を支援に含めるか。財産の処分の制限と検査への協力

補助金は、採択や交付決定のあとにも手続が続きます。事業の進み具合の報告、変更や中止の承認の申請、事業が完了したあとの実績報告、そして額の確定です。これらを支援契約に含めるかどうかを書いていない契約は少なくありません。含めないつもりの支援者と、当然に含まれると考えていた申請者との間で、実績報告の期限が迫ってから揉めるのは典型的な場面です。報酬の算定基礎を「額の確定」に置く契約では、交付後の手続まで支援しなければ報酬が確定しないことにもなり、契約の終点(どこまでを支援とするか)が、報酬の発生とつながって問題になります。

交付後の手続を契約に入れるときの整理

手続契約に入れるときの書き方入れないときの書き方
状況報告(12条)報告書の作成の補助と提出前の確認を支援の範囲に含め、資料の期限を決める報告は申請者が行う旨と、支援者が受け付ける質問の範囲を書く
変更・中止の承認の申請(7条)変更が生じたときの相談窓口と、承認を得るまで実行しない旨を申請者の義務として書く変更や中止は申請者の責任で行う旨を書く。相談は別の業務として扱う
実績報告(14条)作成の補助を含める場合は、必要書類の一覧と提出期限を別紙にする範囲外と明記し、必要なら別の契約で定める
額の確定(15条)確定通知の写しを受け取る手続と、確定額に基づく報酬の精算の方法を書く報酬を交付決定の時点で確定させる場合は、その後の減額を報酬に反映させない旨を書く
検査・調査への協力(23条)調査があったときの資料の再提供と、同行・立会いの可否を書く協力しない旨ではなく、協力の範囲と費用を定める

どちらの書き方にするかは、取引の実態で選ぶものです。大切なのは、書かないまま走り出さないことです。交付後の手続を含めない契約では、その旨に加え、報酬の算定基礎が交付決定額であって確定額ではないことを書いておかないと、のちの減額の局面で報酬の戻しを求められる余地が残ります(報酬の発生時点の分け方は成功報酬の発生時点のページで整理しています)。

補助金で取得した設備や機器には、使い方の制限がかかる場合があります。国の補助金では、補助事業により取得し、または効用の増加した財産のうち政令で定めるものを、承認を受けずに、補助金の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、または担保に供してはならないとされています(補助金適正化法22条。政令で定める場合を除く)。違反すると、決定の取消しや返還の原因になりえます。制度ごとに処分の制限の期間や対象は異なるので、実際は交付要綱で確認が必要です。

支援契約との関係では、次の二点が問題になります。一つは、事業の完了後に、支援者が申請者の財産の処分や転用に関する相談を受けたときの扱いです。支援者は、相談に応じる義務を負うのか、承認の要否を調べて伝える義務までを負うのかを、範囲として書いておきます。もう一つは、行政庁による報告の求めや立入検査(同法23条)への対応です。交付のあとで調査が入ったとき、支援者は資料の再提出や説明に協力するのか、その費用は誰が負担するのかを決めておきます。協力義務を無期限にすると支援者の負担が重く、全く書かないと申請者の側が困ります。「実績報告の完了から一定の期間」「資料の再提供は無償、同行や立会いは別途協議」といった線引きが、現実的な落としどころになります。

返還が起きたときの報酬の戻しと、事前に確認すべき問い

返還が起きたときに、すでに受け取った報酬をどうするか。これも契約で決めるべき項目です。報酬の算定基礎を交付決定額としている場合、取消しや減額があっても、すでに成果は出たものとして報酬は戻さない、という考え方があります。反対に、返還された額に対応する部分は戻す、あるいは取消しの原因が支援者の側にあるときだけ戻す、という考え方もあります。どちらが正しいということはなく、条項の組み立てが分かれ目です。報酬が支払われる条件(採択、交付決定、額の確定、入金のどの時点か)と一体で設計します。

第○条報酬の戻し

  1. 甲に対して補助金の返還が命じられた場合において、その原因が乙の責めに帰すべき事由にあるときは、乙は、返還が命じられた額に対応する部分の報酬を、甲の請求から○日以内に返還する。
  2. 前項の原因が甲の責めに帰すべき事由にあるとき、または乙の責めに帰すべき事由がないときは、乙は報酬を返還する義務を負わない。
  3. 乙の責めに帰すべき事由の有無について当事者間に争いがあるときは、交付決定の通知書、実績報告書、行政庁からの通知その他の書類にもとづいて協議する。

条文の骨組みの一般的な例です。報酬の算定基礎、戻す範囲(全部か、返還された額に対応する部分か)、期限は、取引の実態に合わせて決めます。

確認の問い返還と責任を契約に書く前に確かめる問い

  1. 返還を命じられる主体は誰か(補助事業者か、間接補助事業者か、その他の受給者か)

    補助金適正化法でも、補助事業者等と間接補助事業者等が分かれている。名義人と実際の事業者が違う場合は、返還の主体を契約で特定しないと、負担の議論が成り立たない。

  2. 返還の原因として何を想定するか(資料の誤り、条件違反、事業の中止、支援者の誤り)

    原因を分類せずに「返還は一方が全額負担」と書くと、どの場面でも極端な結果になる。原因の分類は、責任の分担と報酬の戻しの両方の基礎になる。

  3. 交付後の手続は支援の範囲に入るか

    範囲外のまま走り出すと、実績報告の期限が迫ってから、誰の仕事かで揉める。入れる場合は期限と必要書類を別紙にする。

  4. 支援者の責任に上限を置くか。置くなら故意・重過失を除外するか

    返還の額は報酬よりはるかに大きくなりうる。上限と除外事由を置かない契約は、受託者にとって予測できないリスクを抱える。

  5. 不正な記載を求められたときに断れるか、解除できるか

    不正受給の問題は、起きた後の賠償ではなく、依頼を断る権利と解除権で先に防ぐほうが現実的である。

支援契約以外の契約で、返還責任を相手に全額負担させる条項を読むとき

返還の定めは、支援契約だけに現れるのではありません。事業を委託する契約や、設備を貸す契約、運営を任せる契約の中に、「補助金の返還義務、加算金、延滞金その他の金銭負担が生じた場合は、受託者(または借主)がすべて負担する」という条項が置かれることがあります。補助金を使う事業を他人に任せる側から見れば、自分が返還の名宛人になる以上、任せた相手の落ち度で返還が生じたときに求償したい、という要請は自然です。ただ、書き方が広すぎると、受ける側は、自分では管理できない理由(制度の運用の変更、審査の判断、委託した側の事業の進め方)による返還まで負うことになります。

読むときの観点は四つです。第一に、負担の発生原因が「相手方の責めに帰すべき事由」に限られているか、それとも原因を問わないか。第二に、負担の対象が返還の元本だけか、加算金、延滞金、弁護士の費用、信用の毀損といった派生的な損害まで広がっているか。第三に、負担に上限があるか、契約が終わったあとも続くのか。第四に、自分の側の落ち度(資料の提供の遅れ、指示の誤り)がある場合の過失の割合を考慮する仕組みがあるか。広い条項は、争いになったときに範囲が限定して読まれる余地もありますが、限定して読まれることを前提に契約を結ぶのは危うい方法です。結ぶ前に、範囲を書き直しておくほうが望ましいです。

書き方の例(一般的な例) 広い負担条項の整え方

原因

よくある書き方補助金の返還が生じた場合は、受託者がすべて負担する。
整えた書き方受託者の責めに帰すべき事由により、委託者に補助金の返還が命じられたときに限り、返還の元本と加算金を負担する。

理由「責めに帰すべき事由」に限定し、原因を問わない全額負担を避ける。

範囲

よくある書き方返還、加算金、延滞金、弁護士費用、信用の毀損を含む一切の損害を負担する。
整えた書き方返還の元本、法令に基づく加算金および延滞金を限度とし、間接損害および逸失利益は含まない。

理由派生的な損害を限定し、予測できる範囲に収める。

期間と上限

よくある書き方契約終了後も、返還の請求があれば、いつまでも負担する。
整えた書き方負担の請求は、返還の命令を受けた日から一定の期間内に書面で行う。負担の総額は、委託料の総額を上限とする。

理由期間と上限を置き、故意・重過失は上限の対象から外す。

起きがちなこと

場面別に見る、返還をめぐる食い違い

実績報告の期限が迫ってから範囲が問題になる

報酬は交付決定の時点で支払い済み。実績報告の作成を頼まれた支援者が、範囲外だと断り、申請者が「報酬を払ったのだから当然」と考える。

手当て交付後の手続(状況報告、変更の承認、実績報告)を、含める・含めないのどちらかで書く。含めない場合は報酬の算定基礎も交付決定額と明記する。

決定の取消しで、報酬の戻しを求められる

決定の条件に反した事業の進め方が原因で取消しになったが、申請者は「支援者の助言が不十分だった」と主張する。

手当て返還の原因の分類(申請者の事業の進め方、資料、支援者の説明)と、助言の記録の保存を契約に書く。変更や中止は実行の前に支援者へ知らせる旨を義務にする。

不正な記載の依頼を断ったら、契約の解除が争いになる

数字や要件を通るように整えてほしい、と求められ、支援者が断ると、申請者は契約違反だと言い出す。

手当て虚偽や裏付けのない記載を求められたときに断れること、解除できること、解除後の報酬の精算(履行した割合)を書く。

他の契約の全額負担条項が、後から重くのしかかる

事業を任せた先の運営の問題で補助金の返還が生じ、委託した側が全額を求め、任された側が制度の運用による理由だと反論する。

手当て負担の範囲を責めに帰すべき事由に限り、元本・加算金までに絞り、上限と期間を置く。

調査が入ったとき、支援者の協力の範囲が定まっていない

交付から時間が経ってから報告や検査があり、申請者が資料の再提出と立会いを求める。支援者はすでに契約は終了したと考える。

手当て協力の範囲を資料の再提供までとし、期間を区切る。同行や立会いは別途協議とし、費用の負担者を書く。

返還の問題は、結果が出た後に争点になるため、書面の文言がそのまま判断の材料になります。事前の定めがなければ、民法の一般原則(債務不履行、信義則、公序良俗)に委ねられます。

返還・取消しの条項の点検

  • 返還の義務を負うのは補助事業者本人である前提で書かれているか
  • 返還の原因が分類され、原因ごとの負担者が決まっているか
  • 交付後の手続(状況報告・変更の承認・実績報告・額の確定)を含めるか、含めないかが書かれているか
  • 報酬の戻しの有無と、戻す範囲・期限・原因の判断資料が書かれているか
  • 支援者の責任の範囲に、上限と、故意・重大な過失の除外が書かれているか
  • 虚偽や裏付けのない記載を求められたときに、断れること・解除できることが書かれているか
  • 調査や検査への協力の範囲と期間、費用の負担者が書かれているか

よくあるご質問

補助金の返還を命じられたとき、支援者に請求できますか?

国の補助金では、返還を命じられるのは補助事業者等本人です(補助金適正化法18条)。支援者に請求できるかは、契約書に負担の定めがあるか、定めがなければ支援者に債務不履行がある(民法415条)かで決まります。支援者の説明や作成に誤りがあり、そのために決定が取り消されたといった因果関係を示す必要があります。契約に原因ごとの負担が書いてあれば、それに従って整理します。

返還を命じられると、いくら上乗せされますか?

取消しの処分に関して返還を命じられた場合は、補助金の受領の日から納付の日までの日数に応じ、年10.95パーセントの割合で計算した加算金を納付します(補助金適正化法19条1項。政令で定めるところによる)。納期日までに納付しないときは延滞金もかかります(同条2項)。この条文は国の補助金についての定めで、自治体の補助金は規則・要綱で確認が必要です。やむを得ない事情があるときの免除もあります(同条3項)。

「不正受給があれば、支援者がすべて賠償する」という条項は有効ですか?

賠償額の予定は原則として有効ですが(民法420条)、原因を問わず全額を負わせる定めや、著しく不均衡な定めは、公序良俗(同法90条)に反して無効とされるおそれがあります。有効かどうかは、負担の原因の限定、範囲、上限、当事者の落ち度の有無で判断されます。条文の書き方として、責めに帰すべき事由に限り、範囲と上限を置くのが一般的です。

実績報告まで支援してもらう契約にしないと、報酬の戻しを求められますか?

契約の書き方次第です。報酬の算定基礎が交付決定額で、減額や返還があっても戻さない旨が書かれていれば、実績報告を支援しないことと報酬の戻しは別の問題になります。算定基礎が確定額であれば、額の確定までを支援の終点とするほうが整合的です。いずれの場合も、交付後の手続を含めるか含めないかを明記するのが基本です。

契約書に「返還責任は負わない」と書けば、支援者は何があっても責任がありませんか?

そうとは限りません。返還の名宛人が申請者であることは法律上の前提ですが、支援者自身の誤りによって申請者に損害が生じた場合の債務不履行責任(民法415条)まで当然になくなるわけではありません。「一切責任を負わない」という書き方が有効か、どの範囲で有効かは、文言と事情によって変わります。責任を負う範囲と上限を具体的に書く方法が有力です。

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