補助金・助成金の申請支援を頼む方、受ける方へ申請支援の契約書を、
先に書面にしておく
補助金の申請支援をめぐる揉めごとは、制度の難しさよりも、契約書に書かれていなかったことから起きます。どこまでを支援とし、誰が申請書類を書き、誰が最終の責任を負うのか。報酬は採択で生まれるのか、交付決定か、入金か。不採択のとき、制度が変わったとき、返還を命じられたとき、お金と責任はどこへ行くのか。預けた決算書や従業員の情報は、いつまで誰が持つのか。このガイドは、補助金・助成金の申請や事業計画書づくりを支援する契約について、申請者・支援者・事務局の3者関係と契約の型、業務範囲、法令上の線引き、報酬の型と成功報酬の発生時点、不採択と再申請、支払と入金、申請者本人の責任、返還・取消し、非保証と責任の上限、預かり資料と守秘、事業計画書の著作権と再委託、解約と精算の順に、条文の根拠と書き方の例を整理した解説集です。個別の制度の申請方法や採択のコツは扱わず、契約の書き方に絞ります。
支援を頼む方、受ける方、まず全体像を知りたい方

申請者・支援者・事務局の3者関係と、先に決める条項
補助金の申請の主体は、補助事業を行う申請者です。支援者は申請者から事務の処理を任される受任者、事務局や所管庁は契約の外にいます。この3者関係を押さえないまま「サポートします」と書くと、誰が何を最終判断するのかが曖昧になります。
委任で書くか請負で書くか、補助金・助成金・融資・認定の言葉の違い、業務範囲・報酬・不採択・返還・非保証・守秘・解約という7つの条項の順番を、先に整理します。
報酬の払い方、受け取り方を決めたい方

着手金・成功報酬と、採択・交付決定・額の確定・入金の4時点
着手金、固定報酬、成功報酬、月額のどれを組み合わせるかで、双方の負担は大きく変わります。成功報酬は、採択、交付決定、額の確定、入金のどの時点で生まれるのかを、定義語を先に決めて書き分けます。
補助金は後払いの制度が多く、支援費用の支払と補助金の入金に時間差があります。入金口座を預けるか、報酬を天引きするかなど、お金の流れも先に決めておきます。
不採択、返還、責任の範囲が気になる方

不採択・公募中止・返還のときの精算と、非保証・責任の上限
不採択のとき着手金を返すのか、再申請の費用はどうするのか、公募が中止された場合はどうなるのか。場面ごとに精算の組み立てを決めておかないと、結果が出た後に争いになります。
「採択を保証しない」と書くだけでは責任はなくなりません。故意・重過失の除外、賠償額の上限、支援者自身の説明の誤りの扱い、交付後に返還を命じられたときの責任の分け方まで書きます。
決算書や従業員の情報を預ける方、預かる方

預かる資料の種類、守秘、外部ツール・生成AIの利用、返却と廃棄
補助金の申請では、決算書、賃金や従業員の情報、取引先の情報など、重要な資料を支援者に渡します。提出物の一覧、守秘の期間と対象、個人情報の取扱い、返却と廃棄の方法を、契約に書いておく必要があります。
外部ツールや生成AIに資料を入れてよいか、事務局へ提出する情報の範囲を誰が決めるかも、後から揉めやすい点です。
書類の作成や助言の線引きを確かめたい方

作成・提出・代理と、助言・添削・下書きの境目
補助金の申請書類は、官公署に提出する書類にあたります。他人の依頼を受け、いかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として書類を作成する行為は、行政書士法19条1項による制限の対象になりえます。
報酬の名目をコンサル料やシステム利用料に変えても足りるのか、助言や添削、書式の提供、生成AIの下書きはどう扱われるのか。条文と所管官庁の資料で確認が必要な点を分けて整理します。
すでに揉めている、書面がないまま始めてしまった方

途中解約・精算・報酬の請求と、書面がないときの整理
契約の終点は、申請まで、交付決定まで、実績報告まで、事業化状況の報告までと、制度によって違います。期間の書き方、任意解約、債務不履行による解除、締切の直前の解約の扱いを整理します。
書面がないまま始めた場合は、確認書や覚書で後から決める方法があります。報酬をめぐる争いの初動として、通知書の写し、履行内容の記録、報酬明細への異議を押さえておきます。
このガイドの解説ページ
よくあるご質問
補助金の申請支援の契約は、委任と請負のどちらで書きますか?
申請書類づくりや助言は、事務を処理する性質が強いため、委任(法律行為でない事務の委託は準委任。民法643条・656条)で書くことが多く、採択という結果の完成を約束する請負(同632条)の形にはなじみにくい面があります。ただし、どちらに当たるかは契約書の書き方と実態で決まります。成果物(計画書の完成稿など)の引渡しを約束するなら、その部分の性質を書き分けておきます。
成功報酬は、採択・交付決定・額の確定・入金のどの時点で発生すると書くべきですか?
法律が決めてくれるわけではなく、契約で決める事項です。国の補助金では、交付の決定(補助金適正化法6条)、決定の通知(8条)、補助金等の額の確定(15条)と段階が分かれ、実際の入金はその後になる制度が多くあります。自治体の補助金は各団体の規則・要綱で確認が必要です。「交付決定額」「入金完了」などの定義語を先に固定し、減額や辞退があったときの扱いまで書きます。
不採択だったとき、着手金は返す必要がありますか?
契約書に定めがなければ、一律の答えはありません。受任者は特約がなければ報酬を請求できず(民法648条1項)、事務の処理が履行の中途で終わったときは、すでにした履行の割合に応じて報酬を請求できます(同条3項)。着手金を返すのか、再申請に充てるのか、実費だけを清算するのかを、不採択・公募の中止・申請に至らなかった場合に分けて書いておきます。
補助金の申請書類を、報酬を得て代わりに書くことに制限はありますか?
行政書士法19条1項は、行政書士又は行政書士法人でない者が、他人の依頼を受け、いかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として同法1条の3に規定する業務(官公署に提出する書類の作成など)を行うことを制限しています。助言や添削、書式の提供が作成にあたるかどうかは、行為の中身で判断されるため、条文と所管官庁の資料で確認が必要です。契約書では、作成・提出・助言の別を行為ごとに書き分けます。
補助金の返還を命じられたら、誰が負担しますか?
国の補助金では、交付の決定が取り消された場合に補助金の返還が命じられ(補助金適正化法17条・18条)、返還の義務を負うのは補助事業者本人です。加算金や延滞金も定められています(同法19条)。偽りその他不正の手段により補助金の交付を受けた場合は、同法29条の罰則(拘禁刑・罰金)の対象になります。支援者に返還の責任を負わせる条項を置くときは、負担の範囲や上限を慎重に書く必要があります。
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運営事務所・ご相談のご案内監修:アトラス行政書士法人(代表社員 荒木素子・特定行政書士) 最終確認日:2026年10月15日